仙台新撰落語会「山川短志」その一
仙台新撰落語会代表、山川短志。
私の大好きな社会人落語家。その高座は絶品。
仲間内からはフラのある芸、短志さんのキャラクターのある芸だねと言われている。勿論フラや個性はあったけど、でもじっくり聴いてみると、凄く計算されてやってるように感じた。このテンポで噺を運んでって、この間でこの台詞放ったらそりゃウケるよ。観たことある噺は全てそんな感じだった。
本人飄々としてふわふわ・おっとりした印象なんだけど、結構早口。カミシモの切り替えもスピーディー。
たまたま共演の機会があった東北学院大落研OBの翁家小三馬(おきなやこさんば、落研一期生)さんが短志さんの落語観て「思いのほか、かなり早いな」と仰ってた。
当たり外れはある。駄目な時もあったと思う。
ハマった時は凄まじかった。お客さんの笑い声のオクターブが違った。ツボにハマって笑いのループから抜け出せなくなり、このままだとお客さん笑いすぎて失禁しちゃう、そういう感じ。
東北学院大落研OBの胃仲家百勝(いなかやひゃくひょう、落研二期生)さん、自分主催の落語会にゲストで呼んだ短志さんがバカウケし、思わずぽろっと「あのウケ方はずるい」。
でもそういうお客さんを目の前にして、当人は昂ぶることもなく、常に凪。
私も袖で聞いていて、何度もウケた。袖で爆笑するわけにいかないから随分堪えた。素人の落語であんなに笑ったの短志さんだけ。絶品。他の仲間には申し訳ないけど、本当に短志さんだけ。新撰落語会では、もう心置きなく爆笑出来るように袖で観るのやめた。受付とか、後ろの方でお客さんと一緒に観る事にしている。
駄目な時もありました。単純に、台詞忘れて後が出てこない。順序が逆になっちゃう。ネタおろしとか、そういう時にあった。
演り慣れてる「やかん」でも言い立ての所途中怪しくなって、ゴニョゴニョ言って誤魔化したりはあった。
新撰落語会のお客さんはもう慣れちゃって、短志さんが詰まっても変な空気にならない。「…ここんとこがね、後忘れちゃって出てこないんですよ」高座で照れてる短志さん観て爆笑、「まあこの後、色々あって…『で、八っつぁん、そうするとなんだね…』」と噺ワープさせて再開、ここでまた爆笑。こんなのは何度か目撃したことがある。
持ちネタあれこれ。
よくお演りになってたのは「やかん」。春風亭栄橋さんのテープで覚えたとのこと。短志さんの「やかん」何回観ても兎に角面白い。飽きない。
「青菜」「猫の災難」も素晴らしかった。「猫の災難」は私自身好きな噺で、持ちネタにもしているけど、仙台新撰落語会ではやらない。新撰落語会で「猫災」は山川短志の噺だから。私なりのマナー。
圓生が好きだと常々仰っていて、「小言幸兵衛」は圓生ので覚えたという。途中圓生の物真似なんかも入れていた。
同じく圓生の噺ということで「木乃伊取り」は演りたいと仰っていたけど高座には掛けて無かった。「御神酒徳利」も憧れがあると仰って、新撰落語会節目の会で演るおつもりだったけど、結局演ってない。
短志さんが仙台新撰落語会を創る前に参加していた、よせよせ落語会というサークルがある。その記念誌を短志さんから頂いた。それに当時短志さんがお演りになっていた演目が載っている。
「寿限無」「天災」「疝気の虫」「熊の皮」「青菜」「王子の狐」「やかん」「一目上がり」「応挙の幽霊」「千早振る」「あたま山」「禁酒番屋」「猫の災難」「雑俳」「堀の内」「小言幸兵衛」「短命」「死ぬなら今」「転宅」「花見酒」「新聞記事」「一人酒盛」。
「揚子江にかける橋」「旅は道づれ」「初夢」というのもあったが、これらは自作だろうか。
こういった噺を仙台新撰落語会立ち上げの前からお演りになっていたようだ。
仙台新撰落語会で出ているネタで上記と被らない噺だと、「大工調べ」「猫と金魚」「紙入れ」「豆屋」「替り目」「よかちょろ」「のめる」「富士詣り」「六尺棒」「人形買い」「意地くらべ」「粗忽の釘」「紀州」。
新作では、「漫談・北の国から」「吾妻橋」。
私は仕事の都合で仙台新撰落語会に参加出来ていない時期があり、拝見したことの無い噺もある。
山形大学の落研時代のネタは、まだちゃんと伺っていないので分からない。上記のよせよせ落語会の記念誌には「初めての高座は『堀の内』」と記載がある。ただ、以前酒席で伺った時には「落研で最初に覚えた噺は『寿限無』」と仰っていた。
今のところ確認が取れるもので、持ちネタは四十席。けっこうお演りになっている。
コロナ禍では、仙台新撰落語会は一時休止。会員もそうだが落語会に足を運んで頂いているお客様も高齢者中心のため。
コロナ禍中は短志さんは高座には一切上がっていなかったようだ。
現在は落語会の開催も再開している。
当時会員も再開に慎重であり、色々と意見が出た中でようやく再開したのは令和五年一月二十一日。
令和二年一月五日に第五十一回公演をやり、それがコロナ前最後の落語会。間もなくコロナが流行り出し、四月の公演が中止。丸々三年間お休みしていたわけだ。
ようやく再開した第五十二回落語会は、やはり従前と違うやり方で企画せざるを得ない。
借りている会場は普段百名入るところを人数制限で五十人まで。「もしお客さんが五十人以上来たら困る」という、普段ならあり得ない思考で会の運営をしなければならなかった。検温とかもお客さんに協力して頂いた。
今は以前のような制限が無くなったので、そういう心配無く会が出来ている。
コロナ前は、短志さんと一緒に出前寄席に行く機会が何度かあった。でも現在、コロナ禍挟んでからは、あまりあちこち出歩いて落語演りに行くのは遠慮されており、短志さんは落語を披露するのは仙台新撰落語会に絞っておられる。
前述の通りブランクがあり、また元々少なかった高座数が更に減った形になり、恐らく全盛期よりはパワーは落ちているのかも知れない。元々声はあまり張れない方だったので、声量は落ちているかと思う。お年のせいもあるだろうけど。
とはいえ、仙台のアマチュア落語界のレジェンド、他所では観られない短志さんの落語を味わいに、心ある仙台の落語ファンには是非仙台新撰落語会に足を運んで欲しい。
私も、山川短志のファンであるので、短志さんの高座を一席でも多く味わいたい。ネタは毎度お馴染みで良い。
「やかん」「猫の災難」「青菜」は何度でも観たい。
今月、仙台新撰落語会の落語会がある。
今回も短志さんは出演される。私の好きなネタを出していた。
私も出演するので当日は自分も落語を演る楽しみがあるわけだが、でもやっぱり短志さんと共演して短志さんの高座を観られるのが何より楽しみだ。
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